orangain flavor

じっくりコトコト煮込んだみかん2。知らないことを知りたい。

2015年を振り返って

2015年を振り返って

今年はブログなどでのアウトプットが少なかったですが、一応活動していました。

昨年のMBSハッカソンで優勝したことで、ITを活用した30分のテレビ番組の企画に参加して、その中で使うアプリの開発を行いました。テレビ番組の撮影の裏側も見ることができ、レアな経験ができて面白かったです。

Code for Kobeというコミュニティに参加させてもらい、お世話になりました。それまでコミュニティに参加するという経験がほとんどなかったので、月に一回行けば人がいる帰る場所があるというのはいいものだと感じています。

また、子供が産まれました。自分の子供はやはりとても可愛いもので日々楽しく過ごしています。

2016年に向けて

2015年にずっとやってきて未だに公開できてないものを早く公開できればと思います。 今年はあまりコードを書く時間がなくて、いろいろ作りたいものだけは増えているので、それも作っていきたいです。

Code for Kobeでは自分としてのアウトプットは全然出せていないので、力を入れていかないといけないと思っています。

子供が産まれたことで自由に使える時間が減っているので、その中でアウトプットを出せるよう時間の使い方もうまくなりたいです。

来年もよろしくお願い致します。

PythonでブログのHTMLから本文抽出 2015

2015-12-20 19:14追記: readabilityの説明を追加・修正しました。

Webページをクロールした時に、ざっくりと本文 (ページ内の重要なコンテンツ) のみを抽出できると便利です。 Google検索すると、特に日本語だとExtractContent以外の情報があまり見つかりません。 ExtractContentは昔使ったことがあり、たしかに便利なのですが、公開が2007年と若干古いので今でも使えるのかという疑問がありました。また、Pythonで他の選択肢として使えるライブラリは、非日本語圏の方が作ったものと思われるので、日本語のページで問題なく使えるのか知りたかったので調べてみました。

比較するライブラリ

比較したのは以下の5つのライブラリです。

dragnet eatiht extractcontent goose readability
パッケージ名 dragnet eatiht extractcontent (GitHubのみ) goose-extractor readability-lxml
最新版 1.0.1 0.1.14 0.0.1 1.0.25 0.6.1
最新版公開日 2015-01-29 2015-03-28 2011-02-25 2015-01-03 2015-08-26
Python 3対応 × ◯ (GitHubのもの) × ×
ライセンス MIT License MIT License 不明 Apache License 2.0 Apache License 2.0
備考 Moz による研究成果。 rodrigo palacios氏 による研究成果。 Rubyextractcontent.rbPythonに移植したもの。 ScalaGoosePythonに移植・改良したもの。 BookmarkletReadabilityPythonに移植・改良したもの。

アルゴリズムはあまり詳しく把握していませんが、extractcontentのみ正規表現ベースで、その他はHTMLの木構造を見ているようです。 extractcontentのみが日本語圏で開発され、その他は非日本語圏で開発されたものと思われます。

検証するサンプル

適当に思いついた日本語と英語のブログサービスから、サンプルとなるページをピックアップしました。サンプルの選定は適当ですが、画像のみのページでは意味がないので、本文が存在するものを選んでいます。本文の長さはいろいろです。

ブログサービス サンプルページ
(ja) はてなブログ 澤なんて大したことない。 - Yukibou's Hideout on Hatena
http://potatostudio.hatenablog.com/entry/2015/12/17/073000
(ja) アメブロ 子育てらくがき20151126「磁石」|絵かき屋picoの「一期一絵」
http://ameblo.jp/pico-art/entry-12099702897.html
(ja) ライブドアブログ 湯布院にあるハリーポッターの世界!フローラルビレッジ : 九州ドライブ 面白スポット ナビ
http://drive-kyuusyuu.blog.jp/floralvillage.html
(ja) WordPress.com ipython_config.pyの設定メモ « ひよっこ。
https://prepro.wordpress.com/2012/01/05/ipython_config-py%E3%81%AE%E8%A8%AD%E5%AE%9A%E3%83%A1%E3%83%A2/
(ja) ココログ 勤勉にサービスしすぎるから生産性が低いのだよ!日本人は: hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/post-ce16.html
(ja) Seesaaブログ やっぱBABYMETALのスタッフは俺たちのサイトをチェックしてるんじゃね? 【海外の反応】: BABYMETALIZE
http://niyaniyakaigai.seesaa.net/article/431409315.html
(en) Medium My journey into the Berlin startup scene — Wandering CTO — Medium
https://medium.com/wandering-cto/my-journey-into-the-berlin-startup-scene-4dc8faecd305
(en) オリジナル (github.com/blog) How the Services team uses GitHub · GitHub
https://github.com/blog/2093-how-the-services-team-uses-github
(en) Blogger Official Google Blog: ICYMI: A few stocking stuffers from around Google
https://googleblog.blogspot.jp/2015/12/icymi-few-stocking-stuffers-from-around.html
(en) Tumblr Marissa's Tumblr
http://marissamayr.tumblr.com/day/2015/12/10
(en) Typepad Third Party Services: the Wrap Up - Everything Typepad
http://everything.typepad.com/blog/2015/12/third-party-services-the-wrap-up.html

検証スクリプト

実行環境はPython 2.7.11です。抽出結果は目視で確認します。

検証結果

以下の表で、◯は正常に本文を取得できたもの、△は一部のみ取得できたもの、×は空白や関係ないコンテンツが返ってくるなど正常に取得できたとは言えないものを表します。

dragnet eatiht extractcontent goose readability
(ja) はてなブログ × (エラー) × ×
(ja) アメブロ × × (エラー) ×
(ja) ライブドアブログ × (エラー) ×
(ja) WordPress.com △ (ソースコード部分のみ) ×
(ja) ココログ △ (一部のみ) × (エラー) ×
(ja) Seesaaブログ × (エラー) × (エラー)
(en) Medium
(en) オリジナル (github.com/blog)
(en) Blogger × × × ×
(en) Blogger + Splash ×
(en) Tumblr × (エラー)
(en) Typepad
備考 改行は消える。 明らかに処理速度が遅い。筆者は違いを理解していないがv2とetv2という別の手法も使える。 言語の情報を使用している。画像や映像を抜き出す機能もある。 Bookmarkletという出自のせいか、プレーンテキストではなくHTMLの結果が得られる。

Bloggerは本文が<script type='text/template'>タグ内に格納されており、JavaScriptレンダリングされているという特殊性からか、eatiht以外の全ライブラリで本文を抽出できませんでした。このため、先日の記事で紹介したSplashを使ってレンダリングしたものからの抽出も試しました。

Seesaaブログは唯一エンコーディングShift_JISで、HTMLの構造がおかしいのかdragnetとgooseで他では起きないエラーが起きました。

処理速度について

およそ (速) extractcontent, dragnet > readability, goose >>>>> eatiht (遅) という傾向でした。

考察

dragnet

英語のページでは問題ありませんが、日本語のページでは一部エラーが出ました。 改行が失われるので若干使いづらそうです。

元々以下の記事を見て比較を始めたのですが、英語のページでは精度が高いようです。

eatiht

唯一Bloggerから正確に本文を抽出できましたが、日本語のページの多くではエラーが出て使用できませんでした。 処理速度は他のライブラリに比べて10〜50倍程度遅かったです。

今回はeatihtという一番古くからあると思われるモジュールを使いましたが、v2とetv2という別のモジュールも使用できます。特にetv2を使うと日本語のページからもエラーなく本文を取得できましたが、Bloggerからは本文を取得できなくなりました。また、処理速度が遅いのも変わりません。

extractcontent

正規表現ベースのシンプルな手法にも関わらず、はてなブログ以外は正しく抽出でき、精度は高かったです。 2011年からメンテナンスされていないので大丈夫かと思っていましたが、2.7で実行時にエラーが発生することはありませんでした。

はてなブログから正常に取得できないのは不可解なので調べてみると、Google Adsense用のコメントによって本文を抽出するための正規表現が間違っているのが原因のようです。 forkされた以下のものを使うと正常に取得できますが、Google検索しても見つからないので難しい気がします。

https://github.com/petitviolet/python-extractcontent

goose

基本的にエラーにはならないものの、日本語のページからはまったく本文を抽出できませんでした。 (試していませんが) 言語の設定があるので、予めWebページの言語がわかっている場合には指定してやることでうまく取得できるのかもしれません。 SeesaaブログはHTMLが壊れているためか、再帰呼出しの回数が上限を超えてRuntimeErrorになりました。

readability

Blogger以外からは正しく本文を抽出できました。 Python 3にも対応しており、使いやすそうです。 細かい点ですが、本文として取得した文字列の前後に空白が残っており、自分でstripする必要がありそうです。 Bookmarkletという出自のせいか、取得できるのはプレーンテキストではなくHTMLです。 プレーンテキストが欲しい場合には自分でタグを削除する必要があります。

おまけ: Webstemmerを使ってBloggerから本文を抽出する

これまで紹介したような、ルールに従って単一のページから本文を取得する手法のほかに、似た構造の複数のページを比較することで本文を取得する手法もあります。この手法では、最終更新が2009年とやや古いですが、Webstemmerが有名なようです。

Webstemmerを使って、ルールベースのライブラリが苦手としていたBloggerのHTMLから本文を取得してみます。 ただし、公式ページに公開されているバージョン0.7.1では以下の問題があったので、修正したものを使用しました。

  • bsddbモジュールを使用していてPython 2.7では動かない
  • HTTPSのWebページをクロールできない。

以下のコマンドでインストールできます。

$ pip install https://github.com/orangain/webstemmer/archive/master.tar.gz#egg=webstemmer

以下のように実行できます。 textcrawler.py コマンドに -a オプションをつけずに実行すると、 (今回は不要な) アーカイブページが大量にクロールされるので時間がかかります。

$ textcrawler.py -o googleblog -a 'https://googleblog\.blogspot\.jp/\d+/\d+/[^/]+\.html$' https://googleblog.blogspot.jp/
$ analyze.py googleblog.201512201516.zip > googleblog.pat
$ extract.py googleblog.pat googleblog.201512201516.zip > googleblog.txt

以下のようにいい感じに取得できました。素晴らしいですね。

...
!MATCHED: 201512201516/googleblog.blogspot.jp/2015/12/icymi-few-stocking-stuffers-from-around.html
PATTERN: 201512201516/googleblog.blogspot.jp/2015/12/meet-pixel-c-our-take-on-tablet.html
SUB-0: Official Google Blog: ICYMI: A few stocking stuffers from around Google
TITLE: ICYMI: A few stocking stuffers from around Google
MAIN-5: Between last-minute gift shopping, airport pickups, cookie baking, and ugly-sweater parties, there’s a lot to do this season. So you may have missed a few updates from around Google that can actually make your holiday season a little brighter (or at least make your to-do list go a little faster. Won’t make your sweater any less ugly, though). Here’s a look at what we’ve unwrapped recently:
MAIN-5: Add this one to your to-do list: Reminders in Google Calendar
MAIN-5: Whether it’s “send holiday cards” or “use up FSA,” you can now add Reminders to Google Calendar to help you complete your to-do list. These aren’t like those calendar entries you create yourself that you plain-old ignore completely and that then disappear. With Reminders, if you don’t complete the task and dismiss the Reminder, it’ll pop up on your calendar again the next day. And the next. And the … until you can’t take it anymore and just send those holiday cards already. You’ll thank us when your list is checked off. Twice.
MAIN-5: Now on Tap gets handier for the holidays
MAIN-5: Now on Tap helps you get quick information without leaving the app you're using by tapping and holding the home button on Android phones—and new updates make it even handier for the holidays. So if you get a text with your cousin’s flight number, you can tap and hold to see the flight’s status, then respond without having to juggle between searching and texting. If you ordered a gift online and want to know if it will make it down the chimney and under the tree on time, tap and hold your confirmation email to get tracking info. Consider it your own personal Santa’s Little Helper.
MAIN-5: Tell the family when to expect you with trip bundles
MAIN-5: There’s probably a lot going on in your email right now if you’ve got an upcoming trip home or holiday getaway planned. From your flight confirmation to rental car details, Inbox by Gmail already groups these emails into trip bundles so you can find everything you need for your trip quickly. Those bundles just got even more useful—you can now access them offline (good for on the plane), share the trip summary with friends or family, and add other pertinent emails (like that message with your aunt’s new address) to the bundle.
MAIN-5: Templates in Google Docs go mobile
MAIN-5: If you’re collecting family recipes or planning a trip, templates in Docs, Sheets and Slides help you get started faster, so you can spend more time concentrating on the words you’re writing and less time worrying about how it looks. These pre-made templates are now available on Android and iOS so you can do more while on the go. Ho, ho, ho!
SUB-6: Posted by Abbi Tatton, Google Editorial Elf
SUB-7: IMAGE URL
SUB-8: Abbi Tatton
SUB-9: Editorial Elf
SUB-10: Google

まとめ

検証した範囲ではおおむね問題なく本文を取得でき、Python 3にも対応しているreadabilityが良さそうです。もちろん検証に使用するサンプルによって結果は変わってくるので、あくまで参考と捉えてください。

extractcontentは正規表現ベースの単純なスクリプトで高速かつ精度よく本文を抽出できます。ただ、Python版はGoogle検索のトップに引っかかるものは不具合があり、メンテナンスされているとも言えないので、人には勧めづらいです。

Webstemmerはアプローチが異なりますが、複数のページをクロールできる場合には精度よく本文を取得できそうです。

参考

JavaScriptレンダリングサーバーSplashでスクレイピング

これはクローラー/Webスクレイピング Advent Calendar 2015の9日目の記事です。

本記事では、Scrapinghub社*1が開発しているSplashというオープンソースソフトウェアを紹介します。

github.com

JavaScriptを使ったページからスクレイピングする方法としては、PhantomJSとSelenium/CasperJSなどの組み合わせが一般的ですが、これらとは少し違う手段として使えるかもしれないソフトウェアです。 私自身Splashを最近知ったばかりで、軽く探した限りでは日本語の情報もないので、調査しつつSplashの使いドコロを探ってみたいと思います。

Splashとは

READMEには以下のように書かれています。

 Splash is a javascript rendering service with an HTTP API. It's a lightweight browser with an HTTP API, implemented in Python using Twisted and QT.

It's fast, lightweight and state-less which makes it easy to distribute.

(訳)SplashはHTTP APIを持つJavaScriptレンダリングサービスです。HTTP APIを持つ軽量ブラウザで、TwistedとQTを使ってPythonで実装されています。 高速、軽量かつステートレスで、容易に分散できます。

ドキュメントにはもう少し詳しく機能が書かれています。

  • process multiple webpages in parallel;
  • get HTML results and/or take screenshots;
  • turn OFF images or use Adblock Plus rules to make rendering faster;
  • execute custom JavaScript in page context;
  • write Lua browsing scripts;
  • develop Splash Lua scripts in Splash-Jupyter Notebooks.
  • get detailed rendering info in HAR format.

(訳)

要するに、以下のように動くということでしょう。なかなか面白そうです。

f:id:mi_kattun:20151209121519p:plain

Splashを使ってみる

とりあえず使ってみましょう。 今どきのソフトウェアらしく、Dockerを使って簡単にサーバーを起動できます。

$ docker pull scrapinghub/splash
$ docker run -p 5023:5023 -p 8050:8050 -p 8051:8051 scrapinghub/splash

ポートの意味はそれぞれ以下のとおりです。

以下のようにログが表示されたら起動完了です。この記事ではSplash 1.8を使います。

2015-12-08 13:20:59+0000 [-] Log opened.
2015-12-08 13:20:59.239310 [-] Splash version: 1.8
2015-12-08 13:20:59.240288 [-] Qt 4.8.1, PyQt 4.9.1, WebKit 534.34, sip 4.13.2, Twisted 15.4.0, Lua 5.2
2015-12-08 13:20:59.242303 [-] Python 2.7.3 (default, Jun 22 2015, 19:33:41) [GCC 4.6.3]
2015-12-08 13:20:59.242396 [-] Open files limit: 1048576
2015-12-08 13:20:59.242472 [-] Can't bump open files limit
2015-12-08 13:20:59.447814 [-] Xvfb is started: ['Xvfb', ':1069', '-screen', '0', '1024x768x24']
2015-12-08 13:20:59.507558 [-] proxy profiles support is enabled, proxy profiles path: /etc/splash/proxy-profiles
2015-12-08 13:20:59.547976 [-] verbosity=1
2015-12-08 13:20:59.548159 [-] slots=50
2015-12-08 13:20:59.548618 [-] Web UI: enabled, Lua: enabled (sandbox: enabled), Proxy Server: enabled
2015-12-08 13:20:59.549491 [-] Site starting on 8050
2015-12-08 13:20:59.549761 [-] Starting factory <twisted.web.server.Site instance at 0x1b87a70>
2015-12-08 13:20:59.551205 [-] SplashProxyServerFactory starting on 8051
2015-12-08 13:20:59.551413 [-] Starting factory <splash.proxy_server.SplashProxyServerFactory instance at 0x1b8a3b0>

起動したら、ブラウザでhttp://<Dockerのホスト>:8050/ にアクセスします。私の環境ではhttp://192.168.59.103:8050/でした。 このURLを開くと、以下のようなデモ用の画面が表示されます。 f:id:mi_kattun:20151209121440p:plain

「Render me!」という緑のボタンをクリックすると、以下のようにGoogleのページがレンダリングされた画像が表示されます。 f:id:mi_kattun:20151209121454p:plain さらに、スクロールするとネットワークに関する情報とHTMLが表示されます。 f:id:mi_kattun:20151209121508p:plain

「Render me!」ボタンを押すと、入力したURLにアクセスし、黒いテキストボックス内のLuaスクリプトが実行される、ということのようです。

SplashのAPIを使う

デモはこれぐらいにしてHTTP APIを使ってみましょう。 /render.html というエンドポイントにurlパラメータを渡すことで、指定したURLのHTMLを取得できます。

$ curl 'http://192.168.59.103:8050/render.html?url=http://google.com'
<!DOCTYPE html><html itemscope="" itemtype="http://schema.org/WebPage" lang="ja"><head><meta content="世界中のあらゆる情報を検索するためのツールを提供しています。さまざまな検索機能を活用して、お探しの情報を見つけてください。" name="description"><meta content="noodp" name="robots"><meta content="text/html; charset=UTF-8" http-equiv="Content-Type">
...

ここで重要なのは、このAPIで取得できるHTMLは、サーバーから取得したHTMLではなく、JavaScriptのonloadイベントが発生した時点でのDOMツリーをHTMLにしたものであるという点です。

このことがわかりやすい例として、PythonでさくっとWebスクレイピングする (JavaScript読み込みにも対応しつつ) - Qiita という記事でサンプルとして使われていた、テレ朝ニュースからスクレイピングしてみます。

news.tv-asahi.co.jp

このページでは、ページ下部の「関連ニュース」のリストがAjaxで読み込まれます。このため、以下のように普通にcurlで取得すると空の<div>要素が存在するだけです。

$ curl http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000064029.html  | iconv -f shift_jis
...
<!-- 関連ニュース -->
            <div id="relatedNews"></div>
...

以下のようにSplashを経由させると、<div>要素の中にコンテンツが含まれた状態のHTMLを取得できます。onloadのタイミングまで待つので少しだけ時間がかかります。

$ curl -v 'http://192.168.59.103:8050/render.html?url=http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000064029.html'
...
<!-- 関連ニュース -->
            <div id="relatedNews">                        <div class="kanrennews">
              <h3>関連ニュース</h3>

              <ul class="newslist clearfix">
                                  <li>
                  <div class="text"><a href="http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000063920.html">「若い皆さん研究頑張って」 物理学賞・梶田さん</a><br><span>(2015/12/07 17:53)</span></div>
                </li>
                                <li>
                  <div class="text"><a href="http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000063849.html">ノーベル賞大村さん現地に 梶田さん燕尾服を採寸</a><br><span>(2015/12/06 11:52)</span></div>
                </li>
                                <li>
                  <div class="text"><a href="http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000063837.html">“ノーベルウィーク”大村さん、梶田さん現地到着</a><br><span>(2015/12/06 05:50)</span></div>
                </li>
                                <li>
                  <div class="text"><a href="http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000063826.html">大村さんも現地到着 いよいよ「ノーベルウィーク」</a><br><span>(2015/12/05 17:31)</span></div>
                </li>
                                <li>
                  <div class="text"><a href="http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000063810.html">ノーベル賞梶田さん到着 これからイベント目白押し</a><br><span>(2015/12/05 11:51)</span></div>
                </li>
                              </ul>

            </div>
            </div>
...

あとはお好きなスクレイピングライブラリでHTMLからスクレイピングすればOKです。

細かい話ですが、このページはShift_JISエンコードされているので、最初の例ではiconvを使って文字コードを変換しています。Splashを通すと、UTF-8エンコードされた状態で取得できるので、iconvは不要です。metaタグは<meta charset="Shift_JIS">のまま取得できるので、ちょっと紛らわしいですね。

render.htmlエンドポイントにはurl以外にも様々なパラメータを渡せます。例えばonloadからさらに指定した時間待つwaitや、ページ内でJavaScriptを実行するjs_sourceなどがあります。

また、他にも以下のようなエンドポイントがあります。

詳しくはAPIドキュメントを参照してください。

Splash HTTP API — Splash 1.8 documentation

Splashの使いドコロ

推測ですが、Splash開発のモチベーションは以下のようなものでしょう。

  1. JavaScriptを使ったページが増えており、JavaScriptへの対応は不可欠。
  2. しかしあらゆるページでPhantomJSを使うと遅くなってしまう。
  3. かといって、JavaScriptを使わないページはlxmlで、使うページはSelenium+PhantomJSなどと使い分けると、APIが違って面倒。
  4. Splashを使って、JavaScriptを実行したあとのHTMLをlxmlなどでスクレイピングすれば、JavaScriptに対応しつつAPIの一貫性を維持できる。

このため、lxmlなどを使って昔ながらのスクレイピングをしている人が、あまりコードを変更せずにJavaScriptに対応したいという目的で使えるのではないでしょうか。

一方でステートレス性を重視しているので、JavaScriptで対話的な操作をしてスクレイピングするという用途には向いていないように思います。サーバーでLuaスクリプトを実行できますが、それであれば正直SeleniumとかCasperJSとかでやっても同じように思います。

また、サーバーを立てる必要があるので、使い捨てのスクリプトにはあまり向かないでしょう。Scrapinghub社はクローラーSaaSを提供する会社であり、Splashもサービスの一つとして提供されています。このため、スケーラビリティが重視されており、ある程度大規模に使用しないと他の手段に比べてメリットを感じにくいかもしれません。

まとめ

SplashはJavaScriptレンダリングサーバーで、JavaScriptを使ったページからスクレイピングするための手段の一つとして使える可能性を持ったソフトウェアです。

ここで紹介したのは一番基本的な機能だけで、ドキュメントを読んでいると冒頭で紹介した機能以外にもさまざまな機能があります。 例えば、HTTPプロキシとして振る舞うことができたり、Scrapyと連携したりもできるなど、色々と面白い使い方ができそうです。

良ければ使ってみてください。

参考

*1:Scrapinghub社は、Pythonの有名なスクレイピングフレームワークScrapyの開発者がやっている会社です。

Scrapy 1.0が公開されました

Pythonの有名なWebスクレイピングフレームワークScrapyがバージョン1.0になりました。*1

f:id:mi_kattun:20150621115515p:plain

0.24からの主要な変更点は下記のとおりです。

  • SpiderでItemの代わりにdictを返せるようになった
  • Spiderごとにsettingsを設定できるようになった
  • Twistedのloggingの代わりにPythonのloggingを使うようになった
  • CrawlerのコアAPIリファクタリングされた
  • いくつかのモジュール配置場所が変更された

他にも数多くの変更点がリリースノートに記載されています。

Scrapy 1.0の感想

大きな機能の追加よりも、APIの整理と安定性の向上がメインのようです。これまではバージョンを重ねるごとに便利になっていくものの、あまりAPIが安定していない印象でしたが、APIを安定させた区切りのリリースと言えるでしょう。1.0というメジャーバージョンに到達したことで、安心して使えるようになったと思います。

Itemの代わりにdictが使えるようになったのはありがたいです。Itemの存在意義は正直謎でしたので。 個人的に気になっていた、単一の要素を取得したい場合でもlistを返すextract()しかなくて使いにくい問題も、extract_first()メソッドが追加されたことで解決したので嬉しいです。

1.0では依然としてPython 2.7のみの対応ですが、1.1のマイルストーンにはPython 3のサポートが含まれています。実際、Google Summer of Code 2015のテーマとして採択されており、この夏の成果が楽しみです。

それでは早速Scrapy 1.0を使ってクローラーを書いてみましょう。

例1:1ファイルのシンプルなクローラー

Scrapyは大規模なクローリングを得意とするフレームワークですが、1ファイルから構成されるシンプルなクローラーも書けます。

ScrapyのWebサイトのトップに表示されている、Scrapinghubのブログをクロールするクローラーを動かしてみます。ちなみにScrapinghubはScrapyの開発者が立ちあげた会社です。

表示されているコードをそのままターミナルに貼り付けて実行してもよいのですが、ちょっと手を加えて解説も加えておきます。

1. Scrapyをインストールする

Python 2.7が必要です。 --upgradeをつけることでインストール済みの場合はアップグレードします。

$ pip install --upgrade scrapy

2. service_identityもインストールしておく

service_identityはMITMを防ぐモジュールであり、これがインストールされていないと警告が出ます。

$ pip install service_identity

3. Spiderを作成する

myspider.pyという名前で以下の内容のファイルを作成します。 日本語のコメントを付けたので、1行目にエンコーディングを指定しています。ファイルはUTF-8で保存してください。

# coding: utf-8
import scrapy


# scrapy.Spiderを継承してBlogSpiderを定義する
class BlogSpider(scrapy.Spider):
    name = 'blogspider'
    start_urls = ['http://blog.scrapinghub.com']

    def parse(self, response):
        # トップページをパースするメソッド。
        # URLに /yyyy/mm/ を含むアーカイブページへのリンクを抽出してクロールする。
        # それらのページはparse_titles()メソッドでパースする。
        for url in response.css('ul li a::attr("href")').re(r'.*/\d\d\d\d/\d\d/$'):
            yield scrapy.Request(response.urljoin(url), self.parse_titles)

    def parse_titles(self, response):
        # アーカイブページからエントリーのタイトルを取得する
        for post_title in response.css('div.entries > ul > li a::text').extract():
            yield {'title': post_title}

4. クローラーを実行する

以下のコマンドで実行できます。

$ scrapy runspider myspider.py
2015-06-20 22:14:05 [scrapy] INFO: Scrapy 1.0.0 started (bot: scrapybot)
2015-06-20 22:14:05 [scrapy] INFO: Optional features available: ssl, http11
2015-06-20 22:14:05 [scrapy] INFO: Overridden settings: {}
2015-06-20 22:14:05 [scrapy] INFO: Enabled extensions: CloseSpider, TelnetConsole, LogStats, CoreStats, SpiderState
2015-06-20 22:14:05 [scrapy] INFO: Enabled downloader middlewares: HttpAuthMiddleware, DownloadTimeoutMiddleware, UserAgentMiddleware, RetryMiddleware, DefaultHeadersMiddleware, MetaRefreshMiddleware, HttpCompressionMiddleware, RedirectMiddleware, CookiesMiddleware, ChunkedTransferMiddleware, DownloaderStats
2015-06-20 22:14:05 [scrapy] INFO: Enabled spider middlewares: HttpErrorMiddleware, OffsiteMiddleware, RefererMiddleware, UrlLengthMiddleware, DepthMiddleware
2015-06-20 22:14:05 [scrapy] INFO: Enabled item pipelines:
2015-06-20 22:14:05 [scrapy] INFO: Spider opened
2015-06-20 22:14:05 [scrapy] INFO: Crawled 0 pages (at 0 pages/min), scraped 0 items (at 0 items/min)
2015-06-20 22:14:05 [scrapy] DEBUG: Telnet console listening on 127.0.0.1:6023
2015-06-20 22:14:06 [scrapy] DEBUG: Crawled (200) <GET http://blog.scrapinghub.com> (referer: None)
2015-06-20 22:14:07 [scrapy] DEBUG: Crawled (200) <GET http://blog.scrapinghub.com/2012/07/> (referer: http://blog.scrapinghub.com)
2015-06-20 22:14:07 [scrapy] DEBUG: Crawled (200) <GET http://blog.scrapinghub.com/2011/11/> (referer: http://blog.scrapinghub.com)
...

実行するとアーカイブページを30ページほどクロールして、タイトルを取得できます。

-o titles.jl という引数をつけると、取得したタイトルがtitles.jlという名前のファイルにJSONlines形式で書き込まれます。

複雑なクローラーの作成

続いて、1年半前の記事と同様にBBCとCNET Newsを対象として、もう少し複雑なクローラーを書いてみます。

以前の記事に書いたクローラーは、Webサイト側の変更によって既に2つとも動かなくなっています。Webスクレイピングの無常さを感じますが、めげずに書き直します。 当時のバージョンは0.20.2でしたが、1.0の機能を使うとよりシンプルに書けます。

スクレイピングした後にデータベースに保存するなどの処理を行ったり、設定を共有した複数のSpiderを動かしたりするなど、1ファイルでは収まらないクローラーを作成するときには、プロジェクトを作るのがScrapyの流儀です。

以下のコマンドで、helloscrapyという名前のプロジェクトを作成します。

$ scrapy startproject helloscrapy

以下のファイルが生成されます。

$ tree helloscrapy
helloscrapy
├── helloscrapy
│   ├── __init__.py
│   ├── items.py
│   ├── pipelines.py
│   ├── settings.py
│   └── spiders
│       └── __init__.py
└── scrapy.cfg

プロジェクトのディレクトリにcdしておきます。

$ cd helloscrapy/helloscrapy

以降では、このディレクトリ(settings.pyが存在するディレクトリ)を基準とします。

とりあえず、settings.pyに以下の設定を追加しておきます。Webページのダウンロード間隔として3秒空け、Webサイトのrobots.txtに従うようになります。

DOWNLOAD_DELAY = 3
ROBOTSTXT_OBEY = True

例2:XML Sitemapを持つサイトのクローリング

XML Sitemapを持つWebサイトをクロールするにはSitemapSpiderが便利です。

例として、CNET Newsを取り上げます。以前の記事ではXML Sitemapを持たないサイトとして紹介しましたが、リニューアルしてXML Sitemapが提供されていました。

spiders/cnet.pyを以下の内容で作成します。scrapy genspider cnet www.cnet.comを実行するとSpiderの雛形が生成されるので、これを変更しても構いません。

# coding: utf-8
from datetime import datetime

import scrapy


# SitemapSpiderを継承する
class CNETSpider(scrapy.spiders.SitemapSpider):
    name = "cnet"
    allowed_domains = ["www.cnet.com"]
    sitemap_urls = (
        # ここにはrobots.txtのURLを指定してもよいが、
        # 無関係なサイトマップが多くあるので、今回はサイトマップのURLを直接指定する。
        'http://www.cnet.com/sitemaps/news.xml',
    )
    sitemap_rules = (
        # 正規表現 '/news/' にマッチするページをparse_news()メソッドでパースする
        (r'/news/''parse_news'),
    )

    def parse_news(self, response):
        yield {
            # h1要素の文字列を取得する
            'title': response.css('h1::text').extract_first(),
            # div[itemprop="articleBody"]の直下のp要素以下にある全要素から文字列を取得して結合する
            'body'''.join(response.css('div[itemprop="articleBody"] > p ::text').extract()),
            # time[itemprop="datePublished"]のclass属性にUTCの時刻が格納されているので、パースする
            'time': datetime.strptime(
                response.css('time[itemprop="datePublished"]::attr(class)').extract_first(),
                '%Y-%m-%d %H:%M:%S'
            ),
        }

以下のコマンドでクローラーを実行します。しばらくするとitems-cnet.jlスクレイピング結果が出力されていきます。

$ scrapy crawl cnet -o items-cnet.jl

例3:XML Sitemapを持たないサイトのクローリング

XML Sitemapを持たないサイトのクローリングにはCrawlSpiderが便利です。

例として、BBCを取り上げます。以前の記事ではXML Sitemapを持つサイトとして紹介しましたが、ニュース用のXML Sitemapが404になっていて使用できなかったので、XML Sitemapを使わずにクロールします。

spiders/bbc.pyを以下の内容で作成します。scrapy genspider -t crawl bbc www.bbc.comを実行するとCrawlSpiderを使ったSpiderの雛形が生成されるので、これを変更しても構いません。

# coding: utf-8
from datetime import datetime

from scrapy.linkextractors import LinkExtractor
from scrapy.spiders import CrawlSpider, Rule


# CrawlSpiderを継承する
class BBCSpider(CrawlSpider):
    name = "bbc"
    allowed_domains = ["www.bbc.com"]
    start_urls = (
        'http://www.bbc.com/news',
    )
    rules = (
        # /news/world/*** というカテゴリページを辿る
        Rule(LinkExtractor(allow=r'/news/world/'), follow=True),
        # /news/world-*** というニュースページはparse_news()メソッドでパースする
        Rule(LinkExtractor(allow=r'/news/world-'), callback='parse_news'),
    )

    def parse_news(self, response):
        yield {
            # h1要素の文字列を取得する
            'title': response.css('h1::text').extract_first(),
            # .story-body__innerの直下のp要素文字列を取得して改行で結合する
            'body''\n'.join(response.css('.story-body__inner > p::text').extract()),
            # .story-body .dateのdata-seconds属性にタイムスタンプが格納されているので時刻に変換する
            'time': datetime.fromtimestamp(int(
                response.css('.story-body .date::attr("data-seconds")').extract_first())),
        }

以下のコマンドでクローラーを実行します。しばらくするとitems-bbc.jlスクレイピング結果が出力されていきます。たまにパースに失敗するページもありますが、無視してください。

$ scrapy crawl cnet -o items-bbc.jl

まとめ

Scrapy 1.0になり、すっきりと書けるようになったことがわかるかと思います。 使いやすくなり安定したScrapyでクローリングしていきましょう。 今後のPython 3対応も楽しみです。

*1:2015-06-21 13:00時点で公式サイトは0.24の表記のままですが、メーリングリストでアナウンスがありました。

LinuxディストリビューションにおけるPython 3デフォルト化の流れ

2015年6月2日修正:henrichさんのコメントを受け、Debianの記述を修正しました。

最近のLinuxディストリビューションにおいてPython 3がデフォルトになってきているという話をチラホラ聞くので、状況を調べてみました。

結論

PEP 394

PEP 394では、Arch Linuxが(アグレッシブにも)Python 3をデフォルトにしたことを受け、Unix-likeなディストリビューション向けに推奨されるpythonコマンドの振る舞いが記述されています。

PEP 394 -- The "python" Command on Unix-Like Systems

Recommendationを簡単に訳してみました。

推奨事項

  • Unix-likeなディストリビューションPython 2をpython2コマンドとして、Python 3をpython3コマンドとしてPATHにインストールするべきである。
  • python2コマンドを実行するとPython 2が起動し、python3コマンドを実行するとPython 3が起動するべきである。
  • Python 2がインストールされている場合は、pythonコマンドをインストールし、pythonコマンドが実行された場合はpython2コマンドが実行されたときと同じバージョンのPythonが起動すべきである。(ただしPython 3が起動する場合もある)
  • Python 2.xのidle, pydoc, python-configなどのコマンドも同様に、idle2, pydoc2, python2-configとして実行でき、バージョンがついていないコマンドが実行された時は、これらのバージョンを実行すべきである。(ただしシステム管理者の設定によってPython 3.xのものが起動してもよい)
  • プラットフォームごとの差異に対応するため、Pythonインタプリタを起動する必要のあるコードではpythonを指定すべきではなく、代わりにpython2python3(またはさらに特定のpython2.xpython3.x)を指定すべきである。Shebangに書くときも同様である。
  • 一点例外として、Python 2.xとPython 3.xの両方で動くスクリプトではpythonを指定したりShebangに書いても良い。
  • Pythonスクリプトから実行する場合は、sys.executableを使うのが望ましい。

Arch Linux

Arch Linuxはローリング・リリースを採用しており、明確なバージョンはありません。 2010-10-18に/usr/bin/pythonPython 3を指すようになったとアナウンスされています。 pythonパッケージをインストールすると、Python 2ではなくPython 3が使えます。

Arch Linux - News: Python is now Python 3

参考:

実際に使ってみる

というわけで使ってみました。basebase-develグループをインストールしただけではPythonはインストールされなかったので、pythonパッケージをインストールしました。

pythonコマンドで確かにPython 3が起動しました。

[root@archiso /]# python -V
Python 3.4.3
[root@archiso /]# which python
/usr/bin/python
[root@archiso /]# ls /usr/bin/python* -l
lrwxrwxrwx 1 root root     7 Mar 25 17:30 /usr/bin/python -> python3
lrwxrwxrwx 1 root root    14 Mar 25 17:30 /usr/bin/python-config -> python3-config
lrwxrwxrwx 1 root root     9 Mar 25 17:30 /usr/bin/python3 -> python3.4
lrwxrwxrwx 1 root root    16 Mar 25 17:30 /usr/bin/python3-config -> python3.4-config
-rwxr-xr-x 2 root root 10440 Mar 25 17:30 /usr/bin/python3.4
lrwxrwxrwx 1 root root    17 Mar 25 17:30 /usr/bin/python3.4-config -> python3.4m-config
-rwxr-xr-x 2 root root 10440 Mar 25 17:30 /usr/bin/python3.4m
-rwxr-xr-x 1 root root  3107 Mar 25 17:30 /usr/bin/python3.4m-config

なお、python2パッケージをインストールすれば、Python 2を使うことも可能です。

Fedora

次期メジャーリリースのFedora 23でPython 3をデフォルトにすることが提案されています。

Changes/Python 3 as Default - FedoraProject

ここでのデフォルトとは、以下のことを意味します。

  • Python 2のみに対応していたYumに替わってDNFがデフォルトパッケージマネージャになる。(明記されていないがFedora 22で実施済みのはず)
  • Python 3がminimal buildrootにおける唯一のPython実装になる。(Fedora 22で実施済み)
  • Python 3がWorkstation LiveDVDにおける唯一のPython実装になる。
  • Python 3がminimal cloud imageにおける唯一のPython実装になる。
  • Python 3がAtomic hostにおける唯一のPython実装になる。
  • Server LiveDVDでもPython 3が唯一のPython実装になると良いが、可能性は低い。

以下の点は議論されているようです。

参考:

ちなみに最近のFedoraのリリース日*1は以下の感じです。

Ubuntu

Ubuntu 16.04でPython 3をデフォルトにすることが提案されています。

Python/3 - Ubuntu Wiki

ここでのデフォルトとは、以下の意味です。

  • Python 3がデフォルトでインストールされる唯一のPython実装になる。
  • Python 3がインストールメディア(ISOなど)に含まれる唯一のPython実装になる。
  • Ubuntu touchのイメージではPython 3のみが使用できる。
  • Python 3をサポートするアップストリームのすべてのライブラリは、Python 3のバージョンがアーカイブに含まれる。
  • Python 3上で実行できるすべてのアプリケーションはデフォルトでPython 3を使う。
  • アーカイブに含まれるすべてのシステムスクリプトPython 3を使う。

一方で、デフォルトが意味しないこととして、以下の点が挙げられています。

  • /usr/bin/pythonPython 3を指すことはない。
  • Python 2がアーカイブから削除されることはない。

参考:

ちなみに最近のUbuntuのリリース日*2は以下の感じです。

  • 14.04 LTS (Trusty Tahr): 2014-04-17
  • 14.10 (Utopic Unicorn): 2014-10-23
  • 15.04 (Vivid Vervet): 2015-04-23
  • 15.10 (Wily Werewolf): 2015-10(予定)
  • 16.04 LTS: 2016-04(予定)

Debian

2015年4月8〜14日に開催されたPyCon 2015において、DebianのPythonメンテナ陣によるミーティングがあり、その後Python 3への移行がアナウンスされました。

移行の具体的な日付やタイミングは見つかりませんでしたが、2020年にPython 2のメンテナンスが終了することもあり、次期メジャーリリースのDebian 9 (Stretch) またはDebian 10 (Buster) でPython 3をデフォルトにするべく取り組みが始まっているようです。

参考:

ちなみに最近のDebianのリリース日*3は以下の感じです。

  • Debian 6.0 (Squeeze): 2011-02-06
  • Debian 7 (Wheezy): 2013-05-04
  • Debian 8 (Jessie): 2015-04-25
  • Debian 9 (Stretch): 2018 2017?
  • Debian 10 (Buster): 2021 2019?

結論

最初に書いたものと同じです。

Python 3を明示的にインストールしなくても普通に使える環境が広がると嬉しいですね。 ディストリビューションのコミッターには本当に頭が下がります。

内容の正確さにあまり自信がないので、間違っていたりもっと良い情報がありましたらお知らせください。 他のディストリビューションの情報も歓迎です。

Joel on Softwareを読んだ

MicrosoftのJoel氏が書いたエッセイ集です。 自分の中で感じていてもうまく言語化できなかったことが明確に言語化されていて素晴らしかったです。

Joel on Software

Joel on Software

特に印象的だったのは以下の2つの章です。

第12章 5つの世界

5つの世界とは以下の5つを指し、それぞれの世界でそれぞれの苦労があるという話です。

  1. パッケージ
  2. インターナル
  3. 組み込み
  4. ゲーム
  5. 使い捨て

インターナルソフトウェア(社内システム)とパッケージソフトウェア(オープンソース、Webベース、コンサルティングウェア)の違いが非常に頷けました。

実際、インターナルソフトウェアとパッケージソフトウェアの主要な違いの1つは、インターナルソフトウェアでは、ある時点以降、それをより頑健にしたり、使いやすくしたりするのにコストをかけることへのリターンは急速に少なくなる一方、パッケージソフトの方は、最後の1%の安定性や使いやすさが競争優位の鍵となり得る点だ。

第18章 二文化主義

UnixWindowsの違いの話です。自分はUnixの方が便利だと思って常用していますが、自分が使いやすいものと一般的に受け入れられているものとのズレが的確に表現されていました。

Unixは他のプログラマにとって有用なコードに価値を置く文化であり、一方Windowsプログラマでない人たちにとって有用なコードに価値を置く文化である。

その他

これら2つの章以外にも、商用パッケージソフトウェアの開発に携わってきた作者のOSSアジャイル開発に対する懐疑的な見方も新鮮でした。

UNIXの考え方ハッカーと画家を読んだときは頷いてばかりでしたが、本書を読んだときは、そういう考え方もあるのかと視野が広がる思いでした。

ハッカーと画家を読んだ

Y Combinator創業者のポール・グレアム氏が書いたエッセイ集です。

本書も読み進めていく中で頷いてばかりでしたが、特に表題作の「ハッカーと画家」が印象的でした。

「計算機科学」という言葉のしっくりこなさが明文化されていて、自分だけじゃなかったのだと救われた気がします。

私は「計算機科学」という用語がどうにも好きになれない。一番大きな理由は、そもそもそんなものは存在しないからだ。計算機科学とは、ほとんど関連のない分野が歴史的な偶然からいっしょくたに袋に放り込まれたもので、言ってみればユーゴスラビアみたいなものだ。

また、「昼間の仕事(day job)」という概念が明文化されていて、そういう割り切り方もありなんだと気付かされました。

ソフトウェアに関してのこの問題への解答は、 実は他のもの創りの人々には既に知られている。昼間の仕事(day job)というやつだ。 この言葉はミュージシャンの間で発生した。彼らは夜に演奏するからだ。 より一般的に言えば、生活費のためにひとつの仕事を、愛のためにもうひとつの仕事をするということだ。

これまで自分が目指していく先にハッカーがあるとは思ってなかったのですが、本書を読んで自分が目指す先はハッカーなのかもしれないと思うようになりました。

そしてやはりLispを使いたくなるのでした。